第 1 話 の 3 

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「いちいちうるせえんだよ、ばかやろう!」 心の中でそう叫びながら、目の前のサンドバッグに右ストレートを叩き込む。 すると隣から「澪、今日も気合入ってるじゃない。何かムシャクシャするようなことでもあったの?」と橘琴音(たちばな ことね)に話しかけられた。 「そうなのよ、もう、聞いてよ!」 琴音とは看護学校からの友達で、この子を頼って桜川病院に移ってきたのだ。 5歳の息子と、給料の安い旦那(琴音談)を持っていて、「やっぱり医者と結婚しとけばよかったよ」が口癖の、外来&オペ場勤務の27歳だ。 一年前からストレスの発散とダイエットを兼ね、二人してこのボクシングジムに通っている。
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