チェーンストークスのためいき

第 １ 話 の １ 出会い

「ヘェーックション！！」
階段ホールに漂う冷気のせいか埃のせいか、はたまた誰かが私の噂をしているせいなのか、とにかく最大級のくしゃみが出てしまい、その勢いで「あ～っ」と叫ぶ暇もなくバットに載せていた鉗子(カンシ)立てが宙を舞い、グゥァッシャーンと派手な音をたて、セッシ（ピンセット）が踊り場一面に撒き散らされた。
「はぁ、もう……」
溜息と共にしゃがみ込み、散らばったセッシをかき集める。
着任早々こんなミスをして、誰かに見られたら恥ずかしすぎる、そう思いながら拾っていると、ふと、どこからか視線を感じ、見渡すとすぐに目が合った、濃紺のオペ着を着た、ちょっとだけ見た目カッコいい男の人と。