第 1 話 の 5 

4/4
前へ
/379ページ
次へ
私は側管からミノファーゲンを注射し、柊先生の顔をタオルで拭いて、血圧と脈拍を測った。 「血圧108の60。プルス(脈拍)80です」 「そっか、ありがとう。じゃあもう上がってくれ」 「えっ? でももう少し様子をみたほうが……」 「俺がここで見とくよ」 「えっ、でも」 「大丈夫、もし吐いたりしても、こいつなら喉に詰まらせてすぐに死ぬなんてこともないだろう。それまでには俺が起きるさ」 「でも……」 「いいからもう上がれ。明日も仕事だろう。じゃあな、おやすみ」 そう言って、秋月先生はベッドの上に寝転んで目を閉じてしまった。 「わかりました……。じゃあ、おやすみなさい……」 明日も仕事、それは先生も同じだ。 気付くと先生はすでにスース―と寝息を立て始めている。 私は脱衣籠に置いてあったバスタオルを先生の上にそっと掛けた。 なんだよこいつ、寝顔は結構かわいいじゃないか。
/379ページ

最初のコメントを投稿しよう!

288人が本棚に入れています
本棚に追加