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「……先生、この曲なんだか知ってる?」
青梅はおもむろにハミングをはじめた。先ほど、夕日を見ながらハミングをしていた曲と同じ曲だ。
「あー、なんだっけ。あれだろ、キャンプとかで歌うやつ」
「キャンプ?さっきから考えてるんだけど思い出せなくて」
「とーおきー…やーまに…ひーはおーちてー、だろ?」
「歌詞あるんだ」
「たぶん。すっかり夜だな…」
理科教師は屈んで煙草の火を揉み消すと、「帰ろうぜ」と青梅を見上げる。
青梅は今日、屋上から飛び降りるつもりだった。理科教師が言ったとおり、自分の人生に興味がなくなったのだ。両親は仕事が忙しいようだし、クラスメイトからもいないように扱われているのだし、自分が死んだところで誰も困らないだろうと。それともむしろ、困らせたかったのか。いなくなることで自分がいたことを伝えたかったのか。青梅にも自分の気持ちが複雑すぎて理解できていない。
「…どうして屋上にいるんだとか聞かないんですね」
「聞いてほしいのか?」
「べつに」
理科教師は立ち上がると、青梅の背中を勢いよく叩いた。突然のことで体が前に傾く。背骨がじんと熱い。
「っなにすんだよ」
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