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デイジーにささやいて
羽生しずかは、放課後の教室であかね色に染まり、静かに、マンガ、『デイジーにささやいて』を一巻から読んでいた。
後ろから、頭にぽふんとその最新刊を受け取った。
ふんわりといいかおりに包まれて、顔がぽーっとなった。
羽生は、こんなことをするのはあの人ではないかと、本を胸にだきながらふり向く。
上背のある神海からだった。
「ま、また変なことをして。神くん。だれか見ているわ。それに、ここは中高いっかん愛中学校の中一松よ。梅組にもどらないとね」
羽生の短い前がみ、高く結ったこしまであるお人形のようなつやつやの黒かみ、グレーにピンクリボンのセーラー服までもが、教室の窓からふく風にふゆりふゆりとゆれていた。
赤いふちのメガネが羽生のヒトミをかくしている。
「しずかさんよ、だいじょうぶ。オレみたいにハンサムなのかんげいされるから」
神は、耳にかかるサラサラの茶のかみを無造作にかき上げ、学ランのえりをゆるめ、羽生の机に片手をつきながらそのヒトミを見つめる。
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