デイジーにささやいて

11/17
前へ
/17ページ
次へ
 ――ひなぎくと話す時間が取れなくなった直は、話があるからと、つぼみに間に立ってもらって、学校の裏庭にあるオリーブの木にさそった。ここは、告白に使われる桜ノ花中学の大切な所だ。 「ぼくがオリーブの木にさそった時、ひなぎくさんと交かん日記を始められないことが分かった。ショックだったよ……。図書室にばかりいるのだもの……」  三上は、ショックをかくせず、おろおろとした。 「目が見えていないなんて思わなかった」  三上は、放心して立ちつくす。 「ごめんなさい……。今までだまっていて、ごめんなさい……。図書室では、デジタル録音図書DAISY(デイジー)を楽しんでいたの……」  野美は、本当のことを明かした。とりつくろうともしないで。 「デジタル録音図書DAISY? そうか、ひなぎくさん、そうだったんだね……」 「本の字を読む代わりに、書いてあるのを読み上げてくれるの。だから、細かくて見にくい所も助かってる」  三上のショックを和らげようと、野美は本当の理由をいっしょけんめいに伝えた。 「図書委員長の持田順次(もちだ じゅんじ)先ぱいと親しくしていたのは、ひなぎくさんが、これを取り寄せるためだったのか」 「はい……。その話すら、だれにも言えなかったの」 「ぼく、来年は図書委員になるよ」 「……」     
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加