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羽生は、神のヒトミにうつるのがこわいけれども、気持ちを知られるのはもっとこわいからと、ガマンした。
ぷるぷるとかたをふるわせ、虫歯が傷むようなポーズで、困ったわーとため息をつく。
「そんなにオレを愛している?」
ジョークでいじめられてると思い、ほおを赤らめてうつむくしかなかった。
「なあ、しずかさん。『デイジーにささやいて』、この四巻を読んだ? 何だかこわくなかった?」
「ん? こわいって……。私は、最新刊をおうちに帰ってから読むから」
「ああ、まだ買ってなかったのか」
「これ、借りてもいいかしら?」
OKサインを神からもらった。
羽生は、ふふっと笑みをこぼした。
「よかった、やっと笑ってくれて」
「泣いたりもおこったりもしていないもん」
羽生と神の二人っきりで窓の外を見ると、愛中学校の文化祭、愛中祭もひかえた十月の夕暮れが愛おしかった。
「あかね色がきれいね……。神くん、いっしょに帰ろうね」
愛おしい時からはなれようとした時、神は、黒板側からかたをたたかれた。
「ここ、ジュリの席なんだけど!」
愛原ジュリが、ボーイッシュなショートの赤みがかったかみで、ツンツンと鼻を上に向けていた。
「ああ、悪い」
神が、そのまま席を返した。
「帰るなら、ジュリと帰ってよ!」
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