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南条は、あわてて、シャープペンシルを置いた。
「交かん日記って、まるで、『デイジーにささやいて』の野美ひなぎくさんと三上直くんみたいね」
羽生が手をぱちっと合わせて喜んだ。
「だー。ぼくは、そんなのやっていないって」
「毎日、交かん中でーす!」
照れる南条に愛原がぴとっとつくと、羽生が照れてしまい、くるっと後ろを向いてしまった。
「わ、私、先に帰るね……」
「待って、しずかさん。オレも」
神は、机に置いたカバンをさっと取って追いかけた。
◇◆◇
校舎を出ると、あかね色はうんと二人のかげをのばした。
羽生が、一歩右足を出すと、かげも同じくついてくる。
神が先に二歩行くと、とんとんとかげも行く。
風が、二人にふゆりと語りかける。
あなたは、どう想っているの?
あなたは、どうこたえるの?
あなたは、どうささやくの?
『去年まで、私達、小学生で全然周りの目なんか気にしていなかった……』
風にささやいたのは、羽生だった。
どこかへ気持ちが走っていた。
胸がとくんっと波打ち始めた。
「お? それって、ひなぎくさんが、直くんに初めて気持ちを伝えようとした、二巻の真ん中、『幼なじみ』だよな。覚えているなんて、しずかさんはすごい」
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