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羽生がどこかへ行ってしまいそうだと神が感じた。
神が、羽生のかげをふんだ。
羽生は足を止め、長いかみとスカートを風に任せると、小さくなみだを散らした。
「あっ。うん、私も視力が弱いの。だからかな、小さいころ読んだマンガを音で楽しめないかって『デイジー!』に入ったの。神くんもいてくれたしね」
「そうか……。しずかさんの赤いふちのメガネは色々と言われたくないから?」
「そうね。地味子ちゃんだから、中学に入ったら、メガネだけでも可愛くしようと思ったの」
「似合ってるよ。な、なんてね!」
神がダッシュして、校門で消えてしまった。
羽生がぱたぱたと門のとびらまで行くと、ひょいと現れた神におどろいた。
「今日も電話しよう、しずかさん」
「四巻を読んだら、私からお電話するね」
◇◆◇
トゥルルル……。
「あの、神海さんのお電話でしょうか?」
「オレだよ。だいじょうぶ」
「おそくにごめんね。もう九時だわ。『デイジーにささやいて』の四巻を読んだの」
「どうだったかな」
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