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「私達は、パピヨンコミックスの『デイジーにささやいて』を愛読しております。その二・五次元ぶたい化をする有志として『デイジー!』を結成しました。もしかしたら、作家の和歌花絵先生がいらしてくださるかも知れません。私達が、原作からいただいたメッセージをそのまま伝えられるかは分かりませんが、がんばりましたので、ご覧いただけるとありがたいです」
幕が上がる前に、三人は、位置についた。
「それでは、開演です」
ブー。
――桜が葉桜に変わるころ、新しい中学生も学校になじんで来ました。野美ひなぎくと三上直は、一戸建ての家が近所の幼なじみで、今日も校門で待ち合わせをしています。
ブレザーのそろいの制服を着た野美に、三上が手をのばす。
「いっしょに帰ろうよ、ひなぎくさん」
「うん」
三上が野美の手を取る。
(神くん……! 練習では、そんなに強くにぎらなかったじゃない。ど、どうしよう、次は私のセリフ、私のセリフなのに。どきどきして何だか目まいがする)
「直くん、私達、この間まで小学生だったのね。ランドセルも小さくなってしまったわ」
野美がとこっと歩き出す。
「なつかしいなあ……。ひなぎくさんも同じくずっと一組だったね。六年間いっしょだったのか。言ってみると面白いよ。一年一組、二年一組、三年一組、四年一組、五年一組、六年一組ってさ」
「わあ、よく口が回るね」
しばらく、二人で手をつないで歩いていた。
(私の胸の中に何かが波打っている。痛い程切ない気持ち。神くんが、手をはなさないから、もう)
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