異質のもの?特別なもの?

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先生の後ろから転校初日の麗はおずおずと夏の教室へ入った。父の転勤で高2の途中だというのに転校してきた。教室ではざわざわしていた空気が一変し、一瞬明るい影が通ったように静かになった。「今日から新しい仲間が増えました。砂藤麗さんです。」先生は麗の名前を黒板に書いた。誰かが「さとう」と言った。「すなふじさんに挨拶をしてもらいます。」先生がどうぞというそぶりを見せる間もなく、真っ赤になりながら麗はそさくさと早口で挨拶をながら、初めて教卓から教室全体を見渡してみた。田舎から来た麗にとって、都会の雰囲気のある子が多そうだった。その中で、1人だけ直射日光のあたる窓側に異彩を放つ生徒がいた。その生徒の髪は青、肌の色も青だった。青と言っても、沖縄の海のような澄んだライトブルーとエメラルドグリーンを混ぜた青だった。肌も透き通るような青だった。麗はその少年に釘づけになった。(青い髪、青い肌。)麗は彼のななめ後ろの席に座ることになった。彼は何か一生懸命書いており、麗が一瞬見たことも、席につくまでに近くを通ったことさえも気づいていないようだった。 教室は去年からクーラーを導入したので、部屋の気温は快適だった。(さすが都会の高校だわ。)麗は今回で転校8回目だった。慣れたと言えば慣れたと言えるし、毎回特有の不安は8回目でもあることはある。しかし、今回だけはなぜか違った。冷房が心地よいだけではなく、何か森林浴でもしているような、前住んでいた空気の澄んだところを思いだすような、懐かしい空気感で一週間を過ごした。ある日、麗は家庭科の準備物を忘れたので、1人教室へ取りに帰った。その時、いつものように青い髪の青い肌の彼がいつものように何か書いていた。邪魔しないようにと静かに机の中を探していたその時だった、突然後ろを振り返り彼はこう言った。「そんなに僕のこと、気になる?」「え?」「教えてあげよっか、僕が青い理由を。」どうやら、彼の青さは生まれつきらしい。海が青いことや、空が青い事と同じように、彼の中の物質に光が反射して、彼が青く見えているのだそうだ。麗は彼と初めて話をしたが、海の波の音や風が漂うような気がした。「君の名は?」「僕の名は、」彼が考えながら言いかけた時、麗はすかさずこう言った。「青ちゃん。」彼は青い髪の頭をかきながらふてくされてこう言った。「やっぱりな。」麗は家庭科の忘れ物をしてよかったと思った。
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