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そこでリュックに忍ばせたカップ焼きそばを見つけてしまったなら、もうやることはひとつだろう。
そして、不運なことに私は火起こしの実践的な技術を持っている。
基本的なスタンスは小枝に火をつけ、段々と太い薪に燃え移らせることだ。
しかし、それはあくまで火起こしをする技術の習得のためだ。
マッチを使って小枝に着火する、と、同時に調理用の油を塗った薪を上にかざす。
普通はこれでは火は移らないが、油を塗っていればこれがわりと高い温度で燃焼するんだ。
鍋に水をいれて火の上に置いておけば、カップ焼きそばを作る程度の熱湯はすぐに沸くというものだ。
ほら、ソースの香りがいいだろう。
極度の疲労に対してカップ焼きそばの、ひいては炭水化物の誘惑は凄まじい。
浪費したカロリーを摂取し、あるいは成長期のこの体の材料にしようと全身がこのカップ焼きそばを欲しているんだ。
分かっているとも。
呆れ返ってため息をついている我が親友も、このソースの香りに衝動を突き動かされているんだ。
あいにくカップ焼きそばの予備はなく、お湯ももう無い。
しかし焼きそばは本の少しだけ残っている。
当然、私はこれを食べたいが我が親友が食べるというのなら、喜んで差し出そう。
ほら。
ソースの香りは疲れた体で抗えるものじゃない。
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