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ひとつの星における同種の知的生物同士の殺し合いは、我々の星の歴史にも確かにあった。しかしそれは、太古と呼ばれる時代の話だ。
世界とは宇宙を指すものであると認識し、他の星の文明との交流や戦争を重ね、気が遠くなるほどの長い時間をかけてそれらを解決した先にようやく確立する倫理観こそ『同種族間の不殺生』だ。
そして、この倫理観は今の宇宙社会の大半を占める一般的なものになっている。
私はもう一度大きく息を吐き出す。
そんなことよりも、早く論文に取り掛からなくてはならないのだ。
他の学者が論文を発表してしまう前に、私が発表する。これは熾烈な競争なのだ。この宇宙に優秀な学者は星の数ほどいる。
新人はまだ、文化も生物も未熟だのとチキュウの文句を言っている。この星と同じように、彼もまた未熟なのだ。
私はひとつ声をかけ、足早に自室に戻った。
「チキュウは青かった、とでも書いておきなさい。」
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