百億光年先のガガーリン

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無人宇宙探査船に備え付けられた自律思考プログラムは、他の探査船のデータをリアルタイムで解析しながら未踏領域を判断し、今もなお宇宙を進み続けている。 観測データは即時この施設のデータベースに連携され、宇宙地図生成プログラムが地図を書き上げていくが、特筆すべき事由のない星にはプログラムの自動採番によって管理番号を設けられた上で地図上へプロットされ、解析データのバックアップ処理を施された後でデータ倉庫に眠り続けることとなる。 この星もデータ倉庫に保管されていた星の一つであるという旨を話し終えたところで、副議長に話を遮られた。 「そんな前段はいいから、有人探査船を飛ばすのか飛ばさないのか、結論から言いなさい。」 六番目の足を口に当て、咳払いをした後に私は続けた。 「この星自体は大した特徴を持っていません。しかし、その星から少し行ったところに、第6宇宙へのワームホールの存在が確認されています。このワームホールですが、閉塞している様子が見られますので、その保全も兼ねて、この星で生命科の有人探査研修を行うというのはいかがでしょうか。新人研修の必須授業でもありますし、費用も時間も、そこまでかかるものではありません。」 副議長が目配せを送ると、先程まで目を瞑っていた議長は長い首を縦に振った。 「では、有人探査研修には君も同行しなさい。珍しくない星とは言え、生命が確認されている星です。元生命科のあなたなら講師に適任のはずだ。」 しまった、と思った。 下手に新人研修の提案などすべきではなかった。 私にとって、今はあの論文が最優先だ。以前専門にしていた生命科の研修などに付き合っている暇はない。 論文さえ評価されれば、こんな上司に媚びを売る必要もないのに、私は何を真面目に仕事をしているんだ。それこそまるで、新人のような青さじゃないか。 「…分かりました。」 自分への苛立ちを隠し、私は会議室から出たその足で星間移動許可証の申請の為、総務室へ向かった。
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