土まみれの純白

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 一番初めに覚えた諺は「出る杭は打たれる」であった。子ども用のことわざ辞典をめくっていたときに、「ああ、私のことだ」と思ったのだ。  小学校に通いだした私は、教室で大人しく座っているというノルマを毎日こなしていた。  教科書は配られた週の週末に読み終えていた。算数ドリルをもらった翌日に全問解いたものを提出したら「みんなに合わせようね」と先生に呆れられた。 「どうして?」  先生は答えをくれなかった。入学前に読み書きも足し引きも覚えていた私は今更”あいうえお”の練習をすることに何の意味も見いだせなかったが、わざとレベルを落とすのは簡単だった。授業はだいたい窓の外の空を眺めたり考え事をしたりしながら聞き流していた。暇つぶしに宿題になりそうな箇所を授業中に終わらせておいた。  先生もそれに気づいていたが、当てたときに答えられれば何も言わなかった。やがて優等生というレッテルを貼られ、面倒ごとが起きても私は真っ先に疑う対象から外された。同級生の女子たちからは”ひいき”と言われ、無視されるようになった。
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