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「はよ」
「……おはよう」
結局いつもの時間のバスに戻した。
先に言っておくが彼に会いたいからではない。
時間にだらしないと思われるのが癪だから。
かといって一本早いのだと早すぎる。だから戻しただけ。
なかなか上手くいかないものだ。
「広崎……なんかあった?」
「え?」
不意打ちで顔を覗き込まれた靴箱の前。
随分と近い距離で目が合い、瞠目する私。
「今、ため息ついてただろ?」
原因は君ですけど、とは言えない。
「あ、大丈夫。何でもない。別に大した事じゃ無いから気にしないで」
本当は言いたい。
このモヤモヤは全部あなたのせいだから、明日からは私にかまわずそっとしておいて、と。
「もしかして何か悩んでるのか?相談に乗ってやろうか?例えば……恋の悩みとか、ない?」
「……残念ながら」
初恋らしい初恋もまだだ。
出来る事ならそろそろそんな甘い悩みを経験してみたいものだ。
「え?マジで?あれ……変だな」
下を俯き何かを考え込むように呟く。
「本当に、何か悩んでないのか?」
「……別に、何も」
そんなに誰かの人生相談にでも乗りたいのだろうか。
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