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「だから、そうしてるだろ。最初から」
階段を上る私の足がピタリと止まった。
彼の真剣な声に恐る恐る振り返る。
「まさかモヤモヤさせてたとは思わなかったけど、でも俺……広崎にしか頭撫でてないぜ。この意味、分かるよな?」
「えっと……それって……」
私にしか撫でていない、って事は……。
つまり、それは……。
『好きな子の頭毎日撫ででいたら、その子も自分の事好きになってくれるって』
その言葉の意味がゆっくりと繋がっていく。
その途端に体温上昇。アワアワと気だけ焦って言葉がうまく出てこない。
「も、もしかして……新田くんは私の事……好き、ってこと?」
はぁぁーっと深い溜息つきながらその場にしゃがみ込む彼。
大きな体を小さくたたんで、顔まで隠す。
「くっそ、作戦失敗だわ。普通、頭撫でられたらキュンとかなんないのかよ」
呟く声がダダ漏れていて、思わず苦笑いが込み上げてくる。
だって男子に頭撫でてもらうの初めてだったんだもん。
キュンとかそんなの、よく分かんない。
「すみません、普通じゃなくて」
一応彼に謝ってみる。
階段を降りていき、中々顔を上げない彼の隣に私もしゃがみ込んだ。
大きいのが二人階段の踊り場を占拠。通りすがりの生徒が訝しそうにこちらをチラチラ見ている。
「新田くん、怒ってる?」
まだ上がらない頭をそっと撫でた。
髪に触れたのは二度目。
柔らかな髪は前と同じように私に絡みつく。
ゆっくりと……もう一度、頭を撫でる。
「で?返事は?」
漸く頭を上げて出来た隙間から目だけを覗かせて、彼が拗ねながら聞いてくる。
どうしよう、私……。
彼のことが愛しくて、今、凄く……フワフワしてる。
了
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