モヤモヤ メランコリー

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今までそんな経験がなかったのは、多分この身長のせいだ。重宝されるのは部活の時と高い所の荷物を取る時だけ。 172センチのこの身長と怒り肩、それにベリーショートの髪型せいで、今までまともに女子扱いなどされた事もない。 それなのに、こんな大女にまるで小柄の女の子にするみたいに軽く撫でる。 それだけ新田くんも背が高かった。 男子全員が私より背が高いわけではない。 中にはこんな大女に近寄って欲しく無い人もいる。 だから、敢えてこちらから関わりなど持つ事も無かったから、尚更男子と関わる事に免疫など無かった。 なっ、なでなでって……。 恥ずかしさに頬が火照る。 「あ、うん。良かった……」 返した言葉に少しだけ動揺が混じった。 それが伝わらないようにと更に言葉を継ぎ足す。 「ヨカッタヨカッタ」 心臓の速さに気付かないフリをして無理矢理靴へと意識を向ける。 いつものように靴を履き替えるため、靴箱から私は上靴を出して床に落とした。 靴飛ばしの天気占いでいうところの雨と曇りの形をした靴を足で直しながら履く。 「っぷ、広崎って思ってたよりガサツなんだな」 「え?」 「女子でもそんな履き方すんのな」 「あ……」 笑いながら去っていく彼の後ろ姿を見送る。 はい、確かに家族からはガサツとよく言われておりマス。 彼に笑われた事が急に恥ずかしくなって漸く落ち着いた体温が再び上昇して耳まで熱を帯びた。 デカくてガサツだなんて、そりゃあ彼氏も出来ないはずだ。 こんな事ならもう少しおしとやかさを身に付けておくべきだった。 『お前みたいにガサツな奴、一生彼氏できんわ』 今更兄の言葉が突き刺さる。 別に新田くんに好かれたいわけでなく、男子にガサツと笑われた事が多分私の中では結構ショックだった。
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