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「広崎、今帰り?」
「あ、うん。新田くんも?」
部活が終わって人気の無い玄関は薄暗い。
昼間と異なる静かな空間に二人の声が響く。
「バスケ部も今週末大会だって?」
新田くんが靴箱から靴を取り出しながら聞く。
「うん、そう。バレー部も?」
「そ。広崎もレギュラーなんだってな?凄いじゃん、三年も多いのに」
「まあ、私背が大きい方だからね、それだけだよ」
「何言ってんだよ、努力してたんだろ。お前の事ちゃんと見てる奴がいるんだから自信持てよ」
ハッとして彼を見る。
実は、努力、してる。
選ばれなかった三年の先輩方に陰口叩かれた事もあるけど絶対にそんなのに負けないと、土日は親友の優華に付き合ってもらいながら朝早くから練習していた。
彼の言葉の暖かさに頬が緩む。
照れを隠すように私も尋ねた。
「新田くんこそどうなの?試合出られそう?」
「何だよ知らないのかよ」
残念そうに彼が言う。
同じ体育館を使っていても真ん中は緑のネットで仕切られている。部活が異なれば相手の事など全く分からない。
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