モヤモヤ メランコリー

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「はよ」 「あ、おはよう」 「昨日のハンカチ、サンキュ」 ポケットから差し出されたそれ。 思わず私の口元が緩む。 「新田くん……さ、今日はタオルとかちゃんと持ってきたの?」 「いや、別に。何で?」 「……なら、今日も貸そうか?」 今朝は昨日より雨脚が強かった。 それなのにまた今日も自転車だったらしい、とその姿が語る。 私のハンカチはそのまま彼の手に戻った。 「はは、悪いな。サンキュ」 彼にとって、余程私は撫で易い高さなのか。 雨の匂いが混じった制服の袖口が近付いてきたかと思うと、ポンポンと頭を軽く撫でてまたすぐに引っ込んで行く。 小さい笑みを返した時にはもう、後ろ姿。 何事も無かったかのように、そのハンカチで髪についた雫を軽く抑えて拭き取りながら歩いていく。 その背中を今日は昨日よりも長く見ていた。
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