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床の上で丸くなっているゆみこにおおいかぶさるように、化け物が体を折り曲げて立ちます。
ゆみこは腕と床のわずかなすき間から、毛むくじゃらの足を見ました。
おばあちゃんが毎日、拭きそうじしている床を、化け物から落ちる黒い油のようなものが汚しています。
体の下でお面が小刻みにふるえました。
柱神さまが、見るなと注意しているのです。
ゆみこはあわてて目を閉じました。
オドロゲはなんとしてでも、ゆみこの顔を上げさせようとしました。
まわりをとび跳ねたり、顔を近づけてくんくんとにおいを嗅いだりして、少しもじっとしていません。
動くのをやめたかと思ったら、急にくさい息を吹きかけてきます。
生ごみよりもひどいにおいに、息苦しくって、ゆみこは思わず顔を上げそうになりました。
でも、息を止めてたえました。
いらだった化け物は、どんと足をふみ鳴らします。
ゆみこは床にしがみついて、体が浮かび上がりそうになるのをこらえました。
オドロゲがなにかしてくるたびに、胸のうちに恐怖がつみ重なっていきます。
それでもゆみこはかたく目を閉じて、顔を上げません。
目を合わせると食べられてしまうので、必死にがまんしました。
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