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どのくらい時間がたったでしょう。
それまで色々と手出しをしてきた化け物が、急になにもしてこなくなりました。
「そんなところで何してるんだ、ゆみこ」
おじいちゃんの声がします。
おじいちゃん、帰ってきてくれたんだ。
ゆみこがほっとして目を開けようとすると、手の中で柱神さまが動きました。
「だまされるな。目を開けるな」
注意してもらわなければ、あぶないところでした。
オドロゲはおじいちゃんそっくりの声まねをして、だまそうとしたのです。
オドロゲというのは悪がしこくて、ひきょうな化け物です。
おじいちゃんのまねだけではなく、ママやおばあちゃんの声まねまでして、ゆみこの目を開かせようとしました。
そのたびに柱神さまが声をかけてくれたので、悪だくみはひとつもうまくいきません。
ゆみこも頑張りました。
「疲れた。めんどうだ。お前を食べるのは、もうやめた」
オドロゲは息を切らしました。
でも、おとなしく帰るつもりはありません。
「かわりにのろいをかけてやる。お前の家族から一人を選べ。一生、そいつに触れることができなくしてやるぞ。だれにする?」
ゆみこは、「そんなのやだ!」と答えます。
「ならば朝までここにいて、お前の身代わりに、さいしょに帰ってきたやつを食ってやろう」
化け物は、ゆみこの耳にささやきました。
「おまえが窓を閉めなかったからだ。じいちゃんが先か、おまえの母ちゃんが先か。どっちがおれ様に食われるのだろうな」
オドロゲは開けっ放しの窓から入ってきましたし、柱神さまは柱にかかっていません。
朝になって化け物が自分から出ていくまで、どうにも追い払うことはできないのです。
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