ゆみこと柱神《はしらがみ》さま

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ゆみこのまわりの空気(くうき)が、(こお)りついたように(つめ)たくなりました。 化け物の「のろい」がふりかかったのです。 柱神(はしらがみ)さまも、手の中で小刻(こきざ)みにふるえました。 「(わす)れるなよ。おまえはのろわれた。おまえは妹にふれることができない。へっへっへっ」 オドロゲの愉快(ゆかい)そうな声が(とお)ざかっていくと、(おも)かった空気がすっと動きました。 (こころ)なしか家の中が(あか)るくなり、(あたた)かくなったようです。 ゆみこは、「ほっ」と息をつきました。 「もう、顔を上げて()いのだぞ」 柱神の声がしました。 ゆみこは(あたま)をかかえてうずくまった姿勢(しせい)から、床に手をついてゆっくり立ち上がります。 顔を上げて、()じっぱなしで(つか)れた目を(ひら)きました。 (むね)にかかえたお面が、(はげ)しくふるえます。 「いかん、いかん」 黒い毛むくじゃらの顔が、ゆみこの目の前にありました。 だまされた! オドロゲが柱神さまの声まねをしたのです。 ゆみこを油断(ゆだん)させて、自分(じぶん)の顔を見るように仕向(しむ)けたのでした。 化け物の耳まで()けた口の(りょう)はしが、ゆっくりと上がっていきます。 まんまとだます(こと)ができて、うれしいのでしょう。へっへっへ、と(わら)い声をもらします。 とっさの機転(きてん)でした。 もしかすると柱神さまが、ゆみこの右手(みぎて)(うご)かして(たす)けてくれたのかもしれません。 いつの()にか、水玉(みずたま)もようのワンピースを着た女の子の(かお)には、柱神の面がかかっていました。
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