ゆみこと柱神《はしらがみ》さま

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一階(いっかい)居間(いま)()ん中には、(ほり)りごたつがあります。 ついさっきまでママが広げていた産衣(うぶぎ)が、まわりに(ころ)がっていました。 ゆみこが赤ちゃんのころに()ていた、(あわ)水色(みずいろ)黄色(きいろ)のかわいらしいお洋服(ようふく)です。 ママがおなかをさすりながら、「あなたも着られそうねー」と、赤ちゃんに(はな)しかけていたことを(おも)()しました。 なぜだか不安(ふあん)になってきます。 「ママも赤ちゃんもだいじょうぶよね」 ゆみこは柱神(はしらがみ)さまのお(めん)(はな)しかけました。 この家の(まも)(がみ)さまだと、毎朝(まいあさ)おじいちゃんが()()わせている(かみ)さまなら、ママたちのことを(まも)ってくれるはずです。 おじいちゃんのまねをして(むね)(まえ)で手を合わせると、お面がふるえました。 まるでゆみこの(いの)りにこたえているかのようです。 でも、お面が勝手(かって)(うご)くだなんて、どうしてなのでしょう。 「やだ。ネズミのしわざかな」 おもわず口をついて出た(かんが)えに、ゆみこは両腕(りょううで)をかかえて体をふるわせました。 なん日か前に見たネズミは真っ(くろ)で、(ねこ)みたいに大きくて、(こわ)かったからです。 お面の(うし)ろにいるかもしれないなんて、考えたくもありません。
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