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ゆみこはきょろきょろとあたりを見回しました。
長い棒があればいいなと思ったのです。
ところがホウキもハタキもありません。
そのかわりにピンク色のやわらかいボールを見つけました。
ゆみこが赤ちゃんのころ、投げたり、転がしたりして遊んだものです。
手に持って、リンゴのようにかぶりつくふりをした写真も残っています。
「なにか出たら、これをぶつけよう」
声に出しながらボールを手に取ると、台所の柱にかかっているお面がまた動きました。
カタカタ、カタカタ、……
びっくりしたゆみこは思わずボールを投げつけましたが、そんなことではゆみこの言う、「なにか」に当たるはずがありません。
でも本当のところは、当たらなくていいのです。
「かくれているネズミが、おどろいてにげだすのよ」と、ゆみこは考えました。
ボールは思ったよりもよく飛んで、柱神さまの面に向かって一直線。
ひもで吊るされただけのお面は、床に落ちてしまいました。
「あっ! かみさま」
ゆみこが叫ぶと、おじいちゃんの家が「みしっ」と音を立てました。
なんだか重たいものが屋根にのしかかったみたいです。
気のせいか、部屋も暗くなったようでした。
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