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ちょうどそのとき、開いた窓から「オドロゲ」という化け物が入ってきたのでした。
オドロゲは夜、だれかが一人で家にいるところをねらって、悪さをするのが大好きなのです。
入ってこないようにするには、戸じまりをしっかりしておくしかありません。
ゆみこはまだ化け物のことは知りませんでしたが、天井がぎいぎいと鳴るのを聞きました。
耳をすませると、音はゆっくりと階段の方へ向かっています。
ゆみこはあまりの怖さにふるえ上がりました。
二階からだれかが下りてくるなら、部屋の真ん中にいるとすぐに見つかってしまいます。
となりの家へ逃げるか、どこかにかくれないといけません。
さきほどから聞こえてくる声が、ひくい風のうなりとともに、吐きすてるように言いました。
「けがらわしい化け物め。とうとう入ってきよった」
化け物が家の中に? ゆみこは足音をたてないようにして、台所へ向かいました。
勝手口から外に出て、となりの家へ逃げこもうと考えたのです。
「外に出てはならん。たくさんの化け物が待ちかまえているぞ」
床に落ちたお面が、地の底からひびくような声を出しました。
さっきからゆみこに話しかけていたのは、やっぱり「柱神の面」だったのです。
「どうすればいいの」
勇気をふりしぼって聞き返しました。
七歳のゆみこにとって、ひとりでに話しかけてくるお面は、二階にいる化け物とおなじくらい怖かったからです。
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