あなたと私の天気雨

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観念するするようにうなずいた後 「でも、結局しなかったよ。したふりだけ!それに風吹くん、私より麻帆のリアクション気にしてたし……」 と早口で言った私を陽太は改めて抱きしめた。 「ちょっと……嫉妬した」 予想外のその言葉に私は思わず声をあげて笑った。 少し落ち着いた陽太の気配を感じ、ゆっくりと体を離した私は、少しすねた陽太が何だか可愛く思えて、背伸びをして髪をなでた。 「髪、少し伸びたね。また切ってあげようか?」 フルフルと横に顔をふった陽太は 「今は消したい記憶がないからいい」 と小さな声で言った。 「そっか……」 その言葉が嬉しくてかみしめていた私を見た後、陽太は 「あめ、口開けて」 と言った。 素直にそれに従った私が目をつぶりおそるおそる口を開くと、陽太はポンッと何かを口の中に放り込んだ。 驚いて目を開けた私を陽太はふふっと笑って見つめた。
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