彼のち、引きこもり。ところによりにわか飴

嵐の前ぶれ

「はい。じゃああめちゃん、笑顔で何ポーズかちょうだい。はーい、いいね！かわいい」
「ありがとうございます！」

日差しがガンガン照りつける夏本番。
真昼間の公園で、ファー付きのコートに身を包み、微笑んでいる女が今この日本にいったい何人いるのだろうか。

苦手なセミの大合唱は、ある種の嘲笑にも聞こえてくる。
暑い……。
とにかく暑い……。
思わず真顔になりそうになった瞬間、

「なんか撮影かな？」
「えっ？あれ、あめちゃんじゃない？」
「嘘！？」
なんて声が聞こえてくるだけで私の顔は再び笑顔を取り戻す。

ニコリと笑ってみせただけで
「キャー！」
という声が聞こえてくる。