心を動かす風

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「ねぇ、風吹くん。大丈夫?」 「えっ?何が……?」 「その……私はモデルだし、彼氏いる子も多いからそんなに厳しく言われないけど、風吹くんは俳優さんでしょ。学校の外で女の子と二人でいるとか、まずいんじゃない?」 不安げにそう言った私に、彼はピタリと足を止め 「なんも悪いことしてないから別によくない?俺たち普通に友達なんだし」 とケロッと言ってのけた。 「いや、うん。それはそうなんだけど……」 何だかここまであっさり言われると意識している私の方が恥ずかしい気がする。 再び歩き出した風吹くんの勢いに押されたまま、必死に彼の後ろを歩く私を見て、風吹くんは 「ごめんね。歩くの速かったね」 と私に歩幅を合わせた。 気遣いのできる人。……だけど気遣ってほしい場所が違う。 そんなことを考えている私の心の内など気づく素振りもなく彼は 「本当にこのミルクティーおいしいね!」 と微笑んでみせた。 「でしょ?」 と返事をした時には、もう私はどこかで“どうにでもなれ”と思っていた。
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