心を動かす風

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「ジンジャーエールとウーロン茶お願いします」 学校近くのカラオケボックスの一室に入ると、風吹くんはフロントに電話をかけて、慣れた様子でそう伝えた。 「何か歌う?」 その問いかけに私が首を横に振ると 「そう。じゃあ、さっそくなんだけど……」 とカバンの中をあさり、一冊の本を取り出した。 「何これ?台本?」 戸惑う私に風吹くんは 「実はね、僕、今度初めて映画に出ることになったんだ。しかも主演!」 と嬉しそうに伝えた。 「へー!すごいね!おめでとう」 「ありがとう。でね、今日、麻帆ちゃんかあめちゃんに会えたら読み合わせに付き合ってもらえないかなぁって思ってたんだ」 「なんで私?」 首を傾げる私に風吹くんは次の言葉を笑顔で言葉を続けた。 「この映画、ラブストーリーなんだけど、うちのマネージャーさん、男の人なんだよね。しかもやけに抑揚つけて台本読むの。何か集中できなくてさ。で、俺が頼める女の子って考えたら麻帆ちゃんかあめちゃんだなあぁって」
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