心を動かす風

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なるほど、とは思ったものの正直自信はなかった。 「でも私も演技とかやったことないし……」 躊躇する私の勢いを遮るように、トントンッとドアを叩く音が聞こえ、私たちは部屋の外を見た。 慌てて台本を後ろに隠した風吹くんは、 「お待たせしました。ジンジャーエールとウーロン茶です」 といった店員に愛想良くお礼を伝えた。 店員がいなくなり再び二人になると、彼は 「あめちゃん、お願い!ここのお金はおごるから」 と拝むように私に頼み込んだ。 ここまで来て帰るというのも失礼だよなぁ……。 私は少し悩んだ後、 「自信はないけど、棒読みでも良ければ」 と言葉を返した。 「あー良かった!ありがとう!じゃあ、これ。台本のコピーね」 「準備万端だね、風吹くん」 思わず苦笑いを浮かべる私を無視するように、彼は台本の原本をパラパラとめくった。
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