心を動かす風

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物語は、高校生二人の恋愛もののようだった。 女子力ゼロの女の子・玲が、イケメンのクラスメート・信吾に惹かれて少しずつ綺麗になっていく。 一方の、信吾の方は、これまでさんざん顔だけで寄ってくる女子たちに痛い目をみている。 信吾のために綺麗になっていく玲のことすらもどこか疎ましく、冷たい言葉をぶつけるようになる。 ……なんかどこかで聞いたような話だ。 思わずそんな感想が漏れそうになるのを堪え、私は彼の指示を待った。 「じゃあ、まず3ページ目。二人が初めて会話をするシーンから」 「うん」 校庭前で転がってきたサッカーボールを拾う玲。 それに気づき大きく手を振る信吾。 「すいません!投げてもらってよいですか」 叫ぶ信吾。うなずき思いっきりボールを投げる玲。 玲の投げるボールはコロコロと足元に落ちる。 赤面する玲。 「すみません!」 笑って玲に駆け寄る信吾。 「無理言ってごめん。ありがとう」 信吾、グラウンドにいる仲間の元に戻る。 玲、その背中を見つめる。 ぎこちなくセリフを読む私の下手さなど気にする素振りもなく、風吹くんは信吾のセリフを次々と追っていた。
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