心を動かす風

16/22
前へ
/359ページ
次へ
「いや……玲ちゃん報われて良かったなって思って」 私の言葉に風吹くんは、心底驚いた表情を浮かべた後 「あめちゃんって、純粋なんだね」 とつぶやいた。 「えっ?」 「いや、俺はこの役やってるから、感情移入もするし、信吾も玲も好きだけどさ。読み合わせでここまで感動するなんて」 冷静かつ最もな意見だ。 そしていつもの私なら、こんなに無防備になったりはしない。 “何だか昔の私を思い出して”とか“彼が、なんだか陽太のようで”とか。 そんなこと言ったところで風吹くんだって困るだろう。 私は、涙をぬぐい 「きっといい映画になるよ!風吹くん、がんばってね!」 と会話の方向を変えることでその場を乗り切ることにした。 空気の読める風吹くんはそんな私の気持ちを察してか 「ありがとう!」 と笑顔を見せ、 「このあたり、もう一回やりたいんだけど」 と再びページをめくった。
/359ページ

最初のコメントを投稿しよう!

347人が本棚に入れています
本棚に追加