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翌日、仕事現場で会った麻帆は、かなりご立腹だった。
「恵、無防備すぎ!あんな男と二人でカラオケ行くとか。何かあったらどうするの!」
「いや、麻帆は風吹くんのこと疑いすぎだよ」
麻帆以外になかなか心を許せない私でも、風吹くんが悪い人じゃないことくらいは見極められるつもりだ。
「ああいう男は疑いすぎぐらいがちょうど良いの。心許すと簡単につけこまれるんだからね」
考えてみれば、麻帆はずっと彼氏がいない。
それはこの警戒心のせいだろうか
過去に失恋の痛手で恋に臆病になった、という私みたいな経験も聞いたことがないし、むしろ彼女はいつも男性の注目の的だった。
その大人っぽさで年上の女性が好きな後輩たちにも、知的な女性が好きな年上のおじさまたちにも、オールマイティーにアプローチされてきたはずだ。
「麻帆は何で彼氏作らないの?」
私の言葉に麻帆は眉間にしわを寄せた。
「彼氏って作ってなんの意味があるの?」
「なんのって……」
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