心を動かす風

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じっと見つめる私の視線に、首を傾げた麻帆は、何かを思い出したようにはっとすると 「ちょっと、恵。後ろ向いて!」 と声を強めた。 勢いに押され後ろを向いた私の髪をそっと掴むと、麻帆はわさわさと髪の中を探るような仕草を見せた。 「何やってるの?」 「この間、ヘアメイクの笹野さんが言ってた。恵の頭にたんこぶみたいなのがあったって」 そのセリフをきっかけに、私は、この間の撮影のことを思い出した。 陽太の家で頭をぶつけたすぐ後の撮影日のことだ。 笹野さんに頭を触られた時、私は思わず 「いたっ!」 と声を上げた。 「あめちゃん、たんこぶができてるよ。大丈夫?」 不安げに聞いた笹野さんに 「大丈夫です。ちょっとお風呂場で滑って転んじゃって」 と嘘をついたんだった。
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