嵐の前ぶれ

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何を言っているのか、と首を傾げる私を麻帆は鏡の前に立たせた。 「ちょっと垂れた恵のこの目は、人の気持ちを穏やかにさせる。眉毛を整えれば、もっと目が際立ちそう。ほっぺもうっすらピンクだし、えくぼも可愛い。前髪も自分で切るんじゃなく、ちゃんと美容師さんに切ってもらえばすっごく垢抜けると思うよ」 私はほーっと感心したようにうなずいた後 「でも、私はそういうのは……」 と口をつぐんだ。 「もちろん強要するつもりはないし、恵はそのままでも十分可愛い。ただもし、いつかかわいらしくなりたい、そしたら自信がもてるって言うなら、私は応援するよ」 そう言って笑った麻帆は 「じゃあ、この服買ってくるね」 と笑顔を向け、それ以上私に何かを押し付ける様子もなくレジへ向かった。
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