世界に繋がる空

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「あめは、今、ここで外から花火の音が聞こえたらどうする?」 「えっ……?わー花火大会、どこでやってるんだろうって外に出てみるかな」 「うん。俺にはそれができない」 その言葉に私ははっとして、陽太を見つめた。 「俺だけじゃない。病院で入院している子、体が悪くて自由に歩けないお年寄りは簡単に外に出られないことだって多いんだよ。それにあめだって、“今、ハワイでお祭りやってるらしいよ”って言われたっていけないだろ」 「確かに」 ようやく、陽太の作ったSNSの目的を理解し始めた私は、うんうんと強くうなずいた。 「このSNSは世界の誰かが、善意の気持ちで見たい景色を見せてくれる。自分が生きていることを証明するSNSじゃなくて、誰かがどこかで生きている、自分にはそれがちゃんと見えているって証明するSNSなんだ」 私は陽太の言葉に息を飲んだ。 初めて会った時、あんなにも変わってしまったと思っていた陽太は、私よりずっとすごいことを成し遂げていた。 絶望に満ちたあの目で、ちゃんと世界と繋がろうとしていたんだ。 その事実にじんわりと胸が熱くなった。
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