世界に繋がる空

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麻帆には嘘を重ね、編集部の人にも、麻帆以外の友達にも心は許していない。 何となく、笑顔を作って誰かを助けた気になってる。 でもその根底に、あの頃の私がいる。 傷ついて、怯えて、笑えなくなった私が、心の奥底にずっと眠ってる。 再び私はスマホの画面を見つめた。 陽太のユーザーページに表示された“NewYork”の文字。 その一つ前に並んだ言葉は“SKY”だった。 その一つ前は“RAINBOW”。 どこまで追っても陽太が投稿したページには空の写真が並んでいた。 そこに映る青く美しい空が、どこか悲しくて、私は心がチクリと痛んだ。 「陽太、外に出たいと思う?」 それはどこかで、あの頃の記憶から抜け出せない私への問いかけでもあった。 あの頃を忘れたいと思う?自分にそう問いかける代わりに私は陽太に答えを求めた。 「そうだね。いつか俺のとった空を誰かに送ってあげられたら良いなと思うよ」 陽太のその言葉が私の心を強く揺さぶった。
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