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麻帆はきっと小さい頃から、綺麗なもの、可愛いものを身に着けてきた子だ。
一方の私はどこかで諦めていた。
ふわふわのワンピース。ドット柄のリボン。
そういうものは選ばれた子が身に着けるものだと思っていた。
その気持ちはいつしか私の中で当然となり、気づけばそれを欲しいともうらやましいとも思わなくなっていた。
「何か着てみようかな」
私がぽつりとそうつぶやいた時、麻帆は
「きっと恵はこれが似合うと思うよ」
と小花柄のワンピースを私に差し出した。
あの出来事は今でも忘れられない。
初めてお小遣いで買ったワンピース。
そのワンピースを着て初めて行ったおしゃれな美容室。
髪を切った後、勇気を出して足を踏み入れた化粧品売り場。
そのドキドキした時間を麻帆に伝えた時、彼女は言った。
「ねぇ、恵。雑誌に出てみない?」
彼女のその一言が私の運命を大きく変えた。
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