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それを知ってか知らずか、陽太はふっと時計を見つめた。
「あっ、あめ。ごめん。そろそろ帰ってくれない?」
もう私との話を終わらせたいってことだろうか。
戸惑う私に陽太は
「そろそろ、父さんが帰ってくる。あめがいるとたぶん厄介なことになる」
と告げた。
「あっ、そっか……。うん、わかった」
心の整理がつかないまま、私が荷物を抱え部屋のドアを開けると
「あっ、これっ」
と陽太は未開封の飴の袋を私に向かって投げた。
慌ててそれをキャッチした私に陽太は
「やる。気を付けて帰れよ」
と言葉を投げた。
たったそれだけのことが妙に嬉しかった。
私はその袋をぎゅっと握りうなずくと
「またね」
と言って部屋を出た。
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