予兆を告げる雷

2/31
前へ
/359ページ
次へ
「ご迷惑かけてすみません。風吹くんとは大学の友達で、この間偶然、大学で会って。それでカラオケに行くことに……。でも、付き合ってるとかじゃなくて!カラオケでも、読み合わせに付き合っただけで」 「読み合わせ?」 「はい。風吹くん、映画の出演が決まったから、それに付き合ってほしいって」 私の言葉に社長と坂巻さんは目を見合わせた。 「そういうこと……」 合点がいったというように、坂巻さんはカバンを漁り、私の前に一冊の本を差し出した。 「これ……」 驚いた顔で、それを受け取った私に 「見覚えない?台本」 と彼女は言った。 私はその言葉にゆっくりうなずいた。 それはまぎれもなく、風吹くんが持っていたあの本と同じものだった。
/359ページ

最初のコメントを投稿しよう!

347人が本棚に入れています
本棚に追加