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「すみません。ご迷惑をかけて」
頭を下げた私に坂巻さんは
「そうじゃなくて」
と話を遮った。
「今、噂の二人が、一緒の映画に出たらどうなる?」
「そりゃ、騒ぎになりそうですけど……」
「うん。でも、本当に交際していたら、このタイミングで共演すると思うかしら。しかも恋愛映画の」
「それは……」
常識的に考えればそれはないだろう。
私の表情で、内心の言葉を読み取ったように坂巻さんは話を続けた。
「あなたと彼はもともと友達だった。そして二人で映画に出ることになったから、カラオケで読み合わせをすることにした。役のためとは言えファンの皆さんに誤解を与えて申し訳なかった。これで通すの」
「そんな無茶な……」
「これは先方の事務所の希望でもあるの」
それは私にとって予想外の言葉だった。
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