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「風吹くんの?」
「そう。今まで彼が仕事に対して我を通そうとしたことはなかったって。それが、急に恵を指名したと思ったら、SNSはその子との噂で騒ぎになってる。
正直、本当に付き合ってるんだとしたら共演はまずい。これから彼を売り出さなくちゃいけないからね。でも付き合ってないんだとしたら、共演することで誤解も解けるし、きっと映画も話題になる。だから恵に聞いてみてほしいって言われたの」
こういうのをきっと大人の事情と言うのだろう。
何だか打算的なそのプランが私はどうも納得できなかったが、少し考えて
「私が断ったらどうなるんですか?」
と質問を投げた。
「どうかしら。彼も主演女優を外した事務所に怒っているみたいで。あなたじゃなきゃ嫌だって頑なに言ってるみたいだから」
その言葉は私の気持ちに重くのしかかった。
風吹くん、映画が決まったのすごく嬉しそうだった。
私が断ってもし、この映画がなくなってしまったら……。
気が付けば私は
「わかりました。やってみます」
と小さな声を発していた。
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