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そこからの社長と坂巻さんの動きは迅速だった。
すぐに先方の事務所に連絡をして出演を受けると伝えると
「撮影の入りは来月の中旬を予定してるから、それまでに台本覚えるように。俳優部門の先生に頼んでレッスンも入れましょう。少しでも現場で足を引っ張らないようにしないと」
とスケジュール帳をパラパラとめくった。
「あっ、それと……」
顔を上げた坂巻さんは何かを思い出したように表情を変え
「このことは、麻帆にはまだ言わないでちょうだい」
と釘をさすように言った。
「なんでですか?解禁とか……?」
「それもあるけど、あの子、本当は女優志望なのよ」
その言葉に私はえっ?と思わず声を漏らした。
「やっぱり恵にも言ってなかったのね。あの子完璧主義なところがあるから、何でも事後報告なのよね……。女優になれたら、伝えるつもりだったのかも」
フォローするように伝えられたその事実に私は混乱したまま
「麻帆が……女優?」
と再確認するように言葉を投げた。
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