予兆を告げる雷

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事務所を出て街を歩くと、すれ違う人がちらちらとこちらを見る。 「今のあめちゃんじゃない?」 「うそ?」 今日は笑う元気がない。私は聞こえなかったふりをして、足早に人の波をすり抜けた。 信号につかまり、ふっと顔を上げると目の前の看板には私と麻帆が並ぶ雑誌の表紙が大きく引き伸ばされた看板が目に入る。 何だか、自分の足より速く、自分の世界が進んでいくような気がする。 私はビルの隙間から見える空をパシャリとスマホで撮影した後、陽太が作ったSNS“フォトプレ”を開いた。 “SKY”。一方的にフォローしている陽太の最新の投稿が目に入る。 そこに撮影した写真を送ると、即座に“いいね”とボタンが押されたと表示が出た。 陽太だ。 調子に乗った私は、きょろきょろと周りを見渡してみた。 もっといい写真が……。 挙動不審な私の肩をポンッと誰かが触った。 ドキッとした。ファンの人だろうか。
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