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当初、口をあんぐりと開けることしかできなかった私は
「まぁ……きっと、行ったところで私が選ばれるわけない」
と麻帆の顔を立てることにした。
それが気づけば、言葉巧みな編集者におだてられ、“看板モデル麻帆の親友”として雑誌にたびたび登場するようになっていた。
しまいには専属モデルとなり、
「昔、天の恵で“あめ”って呼ばれてたことがあって」
という雑談を見事に誌面に拾われ全国の女子中高生に
「あめちゃん」
と呼ばれるようになった。
たった一人にだけ許したはずの呼び名は、もはや本名以上に私を現す言葉になっていた。
気が付けば、どんどん自分の存在が大きなものになり時には怖さを感じた。
その反面、私をバカにしたあの頃の同級生を見返したような気持ちにもなっていた。
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