予兆を告げる雷

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「陽太!大丈夫?」 慌てて駆け寄った私に、陽太は 「なんで……」 とかすれた声できいた。 頭に巻かれた包帯、首を支えるサポーター。足に巻かれたギブスを見て、私は絶句した。 「家、行ったの?」 そう聞いた陽太に私はコクコクとうなずいてみせた。 「ひどい……」 そう言った私に 「返事しなくてごめん。暇だからずっとスマホは見てるんだけど、細かい文字が打てなくて」 と右手をあげてみせた。 包帯がまかれたその手を見て、私はぶんぶんと横に顔を振った。 普通にしていたら涙が出そうだった。 顔を振っている間“乾け乾け”と心の中で念じた言葉はまったくいう事をきかず。 顔を止めたら再び目の奥がじんわりと熱くなった。
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