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「どんなに闇にいる気になっても、壁のたった1枚向こう側はこんなに明るい世界」
「えっ?」
「言ったろ、あめ」
あの日のことだ。
はさみを握った自分の姿を思い出し、私はうんとうなずいた。
「あの時もまぶしいって思ったけど、今日はもっとまぶしい」
そう言った後、陽太の目から流れた涙を私は慌てて傍のティッシュで拭いた。
「やめろよ」
「あっ、ごめん。陽太、泣いた顔見られるの恥ずかしいっていうかと思って」
そう言って離れた私を見て、陽太は
「涙を拭いてもらう方が恥ずかしいわ」
と声をあげて笑い、また痛そうに顔を歪めた。
「陽太、早くよくなってね」
「んっ?」
「退院の日、一緒に外に出よう」
「それは……どうかな」
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