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あの時と同じ失敗はしない。
人に見せるのはかわいらしい笑顔だけ。
でも……あの日から、麻帆以外の人を心から信頼して受け入れたことは一度もない。
同世代のモデルや、クラスメートに告白もされたこともあったけれど
「ごめんね。お仕事を大事にしたくて」
とできるだけ切なげに断り続けてきた。
そんなの本当は嘘だ。
人の好意を信用できない。
傍にいたって心なんて読めない。
そんな危うい関係は二度とごめんだ。
そう思った瞬間、浮かんだ陽太の顔は、あの日のゆがんだ冷たい瞳だった。
そういえば彼は、私以外の女の子も振り続けていたんだっけ。
彼は、理想の女の子のハードルがとてつもなく高い人だったんだろうか。
……まっ、今となってはそんなことどうでも良いけど。
カメラのシャッター音と共に私はそんな自分の心からも目を逸らした。
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