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今までの仕事場とは違う空気だ。
緊張でがちがちになる私の横にやってきた風吹くんは、
「この仕事受けてくれてありがとう。大丈夫、あめちゃんならできるよ」
と優しく声をかけてくれた。
「ありがとう。がんばります」
頭を下げた私から、彼が離れたのを見計らって坂巻さんが私の近くにやってきた。
「恵、気を付けてよ。結局、二人が付き合うことになりました、なんてなったらしゃれにならないからね」
「そんなことありえません」
小さな声で全否定をした後、私は
「あの、坂巻さん、麻帆はこのことは……」
と囁くように聞いた。
「あぁ、実はまだ伝えられてないのよ。なかなか一緒になるタイミングがなくて。でも来週には、この映画のクランクインがニュースになるから、それまでには伝えるわ」
「そうですか」
どんよりとした私の声を聞いて、坂巻さんは
「ちょっと。そんなこと気にしてないで、撮影に集中して。大丈夫だから」
と叱責するように言った。
「はい……」
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